素人農業者の素朴な疑問(4)

こんにちは。経理部屋の大橋です。

世間は梅雨入りして、あまりパッとしない天気が続いていますが、

今日も素人農業者のブログ、張り切って参りましょう!

今回は少し制度のお勉強をしたいと思います。

お題はこちら。

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モアークの圃場内(「ほじょう」農業者は畑のことをこう呼びます)にちらほらと見かけるこの看板、

いったい何の看板なのでしょうか。

今回は先生に浅野さんをお招きしました。

大橋: よろしくお願いします。

浅野: 宜しくお願いします。

大: 早速ですが、モアークの圃場にはちらほらとこのような看板が立っていますね。

   今まであまり意識したことがなかったのですが、この看板はなんですか?

浅: これは看板の立っている畑が有機JASの認定を受けた圃場であることを示す看板です。

   もう少し拡大するとこんな感じです。

 
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大: 「有機JASの認定を受けた」というのは具体的にはどのような土地のことをいうのでしょうか。

 

浅: 大雑把に言うと、3年以上農薬や化学肥料(法律では「使用禁止資材」と呼びます)を

   使っていない土地で、かつ現在も使用禁止資材が入らないような措置をしている土地

   のことを言います。詳しい制度などについてはこちらをご覧ください。

大: 農薬や化学肥料が使われていない畑、という意味ですね。

   それにしても3年以上ですか。ということはまったくゼロから始めて有機JASの認定を

   受けるには最低でも3年以上かかるということですか?

浅: 基本的にはそうです。ただし、たとえば長年休耕地だったところで農薬等の使用がまったく

   なかったことが明らかな場合などは別の規定があります。

大: いずれにしても認定をとるのは大変そうですね。費用もそれなりにかかるだろうし…。

浅: そうですね。認定を取るのも大変なんですが、有機JASは認定を受けて終わりではなく、

   どちらかといえば認定を受けてからが始まりなんです。規定に従ってさまざまな記録を

   とらなければなりません。そしてそれらの記録について毎年審査を受ける必要があります。

大: なるほど。一口に有機といっても、「農薬や化学肥料を使わない」というだけではないのですね。

   ただでさえ草抜きや虫害の対策などで手間がかかるのに、その上書類の作成や審査まで

   受けなければならないのですか。大変ですね。

浅: そうですね。実際、作業負担や費用負担がネックとなって、昔からの農法で農薬や化学肥料を

   使わず作っているにもかかわらず、残念ながら認証取得をあきらめてしまう農家さんもいる

   ようです。

 

大: うーん、それはとても残念ですね。生産しているものはまさに有機野菜なのに、

   認証を取得していないから、「有機」と表示できないわけですよね。

   表示ができなければ当然消費者の人達にも伝わらない…。

   

浅: そうですね。難しい問題です。

   消費者の方々に伝わらないという点では、制度自体の認知度がまだまだ低いという問題も

   あります。「特別栽培農産物」などの基準とも混同されがちなようですし…。

    

大: なるほど。消費者の人達にとって本当に有効な情報となるようにしたいですね。

   これ以外に制度の課題といえることはあるのでしょうか。

 

浅: 制度の課題といえるかどうかわかりませんが、モアークの考え方からいうと、

   有機JASは「使ってはいけない資材を規定する基準」であって、農法や品質を規定する

   基準ではないという点です。

  

大: ほう、といいますと?

 

浅: つまり、農薬や化学肥料は使わないという一定基準をクリアしていても、

   野菜を生産する畑の土作りの仕方や栽培の方法が異なれば、野菜の品質には

   バラツキが出てきます。簡単に言うと、有機JAS認証を受けた野菜の中にも

   ランクがあるということなんです。

    ここで全てを紹介すると非常に長くなってしまいますので、詳しくはコチラ

   ご覧いただきたいのですが、非常に重要なポイントです。

 

 大: 有機野菜にランクがあるということですか。この点は非常に重要なので、

   もっと詳しく聞きたいのですが、少し長くなってきましたので、今日のところはこの辺で

   区切りを付けたいと思います。有機野菜のランクの話はまた後日ご紹介しますね。

   浅野さん、有難うございました。最後に一言お願いします。

 

浅: はい。

   作業負担や認知度の点で課題がないわけではありませんが、有機JASの制度があるおかげで

   少なくとも慣行農法との区分けをハッキリさせることができるので、非常に有効な制度だと

   思います。制度の利用の仕方を工夫する必要があるのかもしれませんね。

 

さて、今回は有機JASの制度を取り上げてみました。

 

有機JASの制度についても、制度が生まれた歴史的背景や、世界の有機認証基準との比較、

その他の農産物基準との比較、さらには今後の制度の改正見通しなど、

皆さんにご紹介したいネタがたーくさんありますので、

今後公式ページの方でご紹介していきたいと思っています。是非ご覧いただければと思います。

 

蛇足ですが、個人的には、

農薬・化学肥料を使っていないことを立証する制度より

農薬・化学肥料を使用した場合に表示を義務付ける制度の方が

より消費者の方々にとって有用な情報を提供できるのではないかと考えています。

もちろん、その場合も課題がないわけではありません。

消費者の方々が本当に安心して安全な食品を手に入れることができるように、

これからも努力していきたいと思います。

さて、次回は7月8日。

3週間後にお会いしましょう!

 

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素人農業者の素朴な疑問(3)

こんにちは。経理部屋の大橋です。

前回書いたときには随分先だなあと思ったのですが、

3週間という時間も過ぎ去ってみればあっという間ですね。

さて、「素人農業者の素朴な疑問」3回目、張り切ってまいりましょう!

今回のお題はこちら。

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ハウスの隣にそびえ立つこのネット、

これはいったい何でしょう?

(写真が青みがかっていて若干見にくいですね。スミマセン)

ずーっと前から気になってたんですよ。

なんでこんなところにこんなネットがあるのかなと。

で、早速素人農業者の疑問をプロにぶつけてみました。

今回も健太郎さんにご登場いただきます。

 

大橋 : 健太郎さん、このネットは何をするためのネットなんですか?

 

健太郎 : これは防風ネットです。ハウスに風が直接あたるのを防いでいるんですよ。

       ここの土地は冬場に西から東に向けて強い風が吹くんです。

       この写真で言えば左から右の方向ですね。

 

大 : なるほど、風を防いでいるんですか。ハウスに風があたるとよくないんですか?

健 : ええ、ハウスに強い風があたるとビニールが破れて剥がれたり、

    骨組みのパイプが曲がってしまったりすることがあるんです。

    この場所は写真左側に遮るものがなにもないので、比較的強い風があたりやすいんですよ。

 

大 : 改めて考えてみると、作物に影響するのは虫や病気だけではなく、

    風を含めた天候全般を考えなければならないんですね。

 

健 : そうですね。天気は良い方が作業はしやすいし、ハウスも破壊されませんが(笑)、

    日照り続きでは思うような収穫は得られません。農業で一番難しいところですが、

    また面白いところでもあると思いますよ。

 

大 : なるほど~。ちなみに、防風ネットの効果の程はいかがですか?

健太郎 : お蔭様で、今のところビニールが剥がれてしまったりパイプが歪んでしまったり

       といったことはありませんよ。

 

大 : その地域の気候や地形の特性、季節による変化などに合わせて対策をとっているのですね。

    健太郎さんありがとうございました。

 

僕らの農園にはこの防風ネット以外にも自然とうまく付き合うための様々な工夫があるようです。

これからも素人目線でこれらの工夫を順次ご紹介したいと思います。お楽しみに。

 

ではまた次回。

次回のお題は、写真が間に合わなかったので次回までのお楽しみ。

次は6/18です (3週間先って遠く感じるんですよね)。

 

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素人農業者の素朴な疑問

皆さんこんにちは。大橋です。

決算で大忙しの経理部屋から、素人農業者の素朴な疑問、第2回目。張り切ってまいりましょう!

 
今回のお題はこちら。

 
 
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さて、これは一体なんでしょう?

 
わからないことは人に聞くのが一番。というわけで、今回も先生にご登場願いました。

ベビーリーフのチームリーダー健太郎さんです(なぜ苗字で呼ばないのか、はこちらをご覧下さい)。

 
大橋: 健太郎さん、畑の中にポツンとぶら下がるこの容器、これは一体何ですか?

 
健太郎: これは「フェロモントラップ」といいます。蛾などの虫を捕獲する道具です。

 
大: ああ、なるほど、虫取りですか。

 

健: はい。名前は大袈裟な感じがしますが、仕組みはとても簡単です。近くで見るとこんな

   感じです。

 
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健: ちょっと見えづらいですが、檻のようなものの中にフェロモン剤が仕掛けてあって

   これに引き寄せられた蛾が下の穴に落ちる仕掛けになっています。

 

大: 確かにそれほど複雑な作りではありませんね。ゴキブリホイホイみたいなイメージでしょうか。

 

健: 近いかもしれません(笑)。このトラップは夜盗(ヨトウ)蛾の成虫を捕まえるためのものです。

   実は、食害を起こすのは幼虫の方なんですが、オスの成虫だけをおびき寄せて捕まえるん

   です。そうすることでメスが交尾をできなくなり、幼虫の発生を少なくするんです。
 

大: へぇそうなんですか。実際に食害を起こす幼虫ではなく、成虫を捕まえることで

   元を絶つわけですね。農の知恵ですね。

   ところで、畑の実情を知らない者からすると、虫の害というのはなかなか実感が湧かない

   のですが、虫の影響というのは大きいのでしょうか。

 

健: 大きいも何も…。夜盗の幼虫に食べ尽くされてせっかくの作業がパアになるなんてことは

   ざらにあります。虫には虫の言い分があるのでしょうが、虫に食べつくされた畑をみると

   とても切ない気持ちになります。

 
大: うーん、やはり虫対策というのは超重要ということですね。

   その超重要な虫害対策ですが、フェロモントラップ以外に虫対策というのはあるのでしょうか。

 

健: いろいろありますよ。例えば太陽熱消毒を行ったり、天敵を放したり、キク科の植物を植えたり

   と防除したい虫の種類や季節などによって対策はいろいろです。まあ、自然相手なので

   100%とはいきませんが…。

   虫害を防ぐこと「だけ」を考えたら、おそらく一番簡単で確実なのは農薬を使ってしまうこと

   だと思います。さらに言えば、農薬で防除できるのは虫だけではないんですね。

   病気や雑草も農薬を使えば比較的簡単に防除できるわけです。

   しかーし、農薬には非常に非常に問題が多い!

   語りだすと長くなるのでここでは言いませんが、命をつなぐ食べ物を生産する者として、

   農薬を使うわけにはいかないんです。   

 
大: なるほど、一口に農薬を使わないといっても、いろいろな思いや苦労があるのですね。

   健太郎さん、ありがとうございました。

 
 
 農薬については本当にさまざまな問題があって、もっともっと皆さんにも紹介したいのですが、

 さすがにブログで扱うには問題の幅が大きすぎますので、これに関しては公式ページの方で

 随時取り扱っていきたいと考えています。ご期待ください。

 
 
さて、次回のお題は……。これいってみよう!
 

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 次回は5/29(土)です。相変わらず先だなぁ

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素人農業者の素朴な疑問

こんにちは。
前回からブログに参加している大橋です。今日のつくばは見事な快晴でございました。こういう日は

外作業の人達がうらやましいですね。

 

前回お話ししたとおり、今回から「素人農業者の素朴な疑問」を回答とセットでお送りします。

農園にいながら素人の視点を持っている僕の強み(?)を活かして読者の皆様に農園の日常を

お伝えしていきたいと思います(詳しくはコチラをご覧下さい)

 

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これは前回の最後に掲載した写真ですが、さて一体この作業風景は何をしているところなのか。

当然素人の僕にはわからないので、露地野菜栽培のリーダー角田さんに聞いてみました。

大橋: 角田さん、これは何をしているところなんですか?

 

 角田さん: これは「土」を振るいにかけているところです。

 

大: 何のためにそんなことをしているんでしょう?

 

角: 苗を植えるための準備作業をしているんです。

   セルトレーと呼ばれる小さなポットの集合体に土を入れていきます。

   土がダマにならないように振るいにかけているんです。下の写真がセルトレーです。

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大: なるほど。

角: セルトレーに土を詰めた後、一つ一つのポットに種をまいていきます。

   発芽した後、苗がある程度の大きさになったら「定植」といって苗を畑に植え替えます。

   これは双葉が出てきたところですね。

 

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大: なるほど。

   ところで、素人の素朴な疑問なんですが、そもそも何で苗を作るんですか?

   畑にじかに種を撒けば定植の手間がかからない気がするのですが。

角: 発芽してすぐは病気や虫にやられやすいので、温室などの作物達が育ち易い環境である程度

   まで大きく育てて、抵抗力がついてから畑に移すんです。

   この方が結局は手間がかからないんです。昔の人の知恵ですね。

   「苗半作」と言って苗の出来次第で作物の質や収穫の量が大きく変わってくるんですよ。

  
大: なるほど。小さいうちは気を使って大事に大事に育てるんですね。その方が結局手間が

   かからないんですか。勉強になります。

   ちなみにこれは何の苗ですか?

 

角: これはケールの苗です。「ベジの素」の原料用に栽培しているものですね。

 

大: 「ベジの素」はうちの新商品ですね。

   18種類もの最高ランクの有機野菜が手軽に食べられるスグレモノ。

   我々モアークの自信作です。ぜひお試しください(さらりと宣伝)。

   ところで、苗作りというのは必ずやるものなのですか?

角: 大抵は苗を作りますが、全ての作物に対して苗作りをするのかというと、

   そうではありません。

   発芽率が高いものや病虫害に強いものは直に撒くこともありますよ。

 

大: よくわかりました。どうもありがとうございました。

まだまだ聞きたいことはあったのですが、さすがに長くなってきたので今日はこれくらいにしますね。

さてさて、次回のお題はこちらです。

 

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これ何だと思います?

次回は5月9日(これまた大分先だな)

 

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はじめまして

はじめまして。

経理部屋の大橋と申します。
今回のブログ大型補強(?)によりローテーションに加えて頂くことになりました。
より魅力的なページ作りということで、微力ながら精一杯がんばりたいと思います。

まずはじめに簡単な自己紹介から。
僕は農園で経理事務を担当しています。ご存知の通り経理というのはお金を数えるのが仕事なんですが、どちらかというと僕は「お金では測れないこと」の方に興味があります。

「お金で買えないものはない」と六本木あたりで誰かが言っていましたが、その真偽はさておき、
多くの人がその価値を認めながら、うまくお金で評価できていないものというのが世の中にはいろいろあると思うのです。たとえば、おいしい空気や水、美しい景観、健康や安全、「平和」なんてのもそうですね。数えてみると結構あるんです。

そして、
有機野菜を初めとする「本物の食品」にも、このようなプライスレスな部分があるわけですが、

残念ながら、その価値は正当に評価されているとは言えません。

この「本物の食品」達が持つプライスレスな価値をできるだけ多くの人たちに伝えたい、わかってもらいたい、そんなことを日々考えている35歳(男性、既婚、子供2人)です。よろしくお願いします。

 

さて、長くなってきたので肝心のブログネタに移ります。何を書こうかな…。

上にも書きましたが担当が経理事務なので、ほぼ一日中事務所の中で作業をしています。
5年も農園にいながら、鍬(くわ)一つ使えない素人農業者ですが、
農業に関して素人の目線を持っているのは逆に強みなのではないかと思いつきました。
そこで、

農園を歩き回り、目に付いた「これ何だ?」や「どうしてこんなんなってんの?」を集めて回答とセットでお届けする、というのはどうでしょう?

題して

「素人農業者の素朴な疑問(経理部屋から出てみよう)」

僕の周りにいる「プロ農業者」からすれば当たり前すぎて気がつかないもの、特に疑問に思わなかったこと、そういうところに光をあてて行く企画です(「本物の食」とは関係が薄そうですが、最初なのでその辺は目をつぶっていただいて…)。

早速第1回目というわけで、カメラを持って外に出てみました。この季節、やはり外は気持ちがいいですね。気分は「ぶらり途中下車の旅」です。なにかあるかなーと歩いていると、ありました。
さて、これは何をしているところなのか…。

 

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長くなってきたので回答は次回。
乞うご期待。

次回の予定は4月19日です(大分先ですね)。

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